第十一条その1
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
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司法書士試験・行政書士試験受験対策☆憲法条文解説↓
●1 人権の意義
人権(基本的人権)とは、人が生まれながら当然にもっている権利をいいます。個人の尊重(13条)の考えが根底にあります。個人の尊重の観点から不可欠な権利を人権と呼ぶのです。
(イ)人権の分類
人権はさまざまな角度から分類できますが、大別して自由権と社会権等に分類できます。
①「自由権」は、国家の介入を排除して、個人の自由な意思と活動とを保障する人権です。「国家からの自由」といわれます。
②「社会権」は、社会的・経済的弱者が人間に値する生活ができるよう国家の積極的な配慮を求めることができる権利です。「国家による自由」といわれます。
③ 「参政権」は、国民が国政に参加する権利です。「国家への自由」といわれます。
また、代表的な学説は、人権を下記のように分類します。
①消極的権利(法の下の平等・自由権)
・・・国家の不作為を請求する権利
②積極的権利(受益権・社会権)
・・・国民が国家に対して、一定の積極的作為を要求する権利
cf.受益権とは、裁判を受ける権利、請願権などのことを指します。
③能動的権利(参政権)
・・・国民が能動的地位にあって、国家意思の形成に参加する権利
(ロ)分類の相対性
この人権の分類は、人権の共通の性質に着目として人権を大枠として区分するものです。よって、人権の分類はあくまで相対的なものです。たとえば、一般に社会権とされる生存権や教育を受ける権利でも、国家権力によって不当に制限されてはならないという意味では自由権的側面を有しています。また、表現の自由の保障から導かれる「知る権利」も、国や地方公共団体、マスメディアなどに対して積極的に情報の開示(公開)を求める権利という面から見れば社会権的側面を有しています。
2 人権の享有主体
外国人(日本国籍を有しない者)に日本国憲法の人権規定が適用されるかが争われています。
(イ)否定説
憲法第三章が「国民の権利及び義務」と題しているところから、日本国民に限られるとする説です。
(ロ)肯定説(判例・通説)
①人権は人が人であることによって認められる権利であること、②日本国憲法が国際協調主義を採用していることから、人権規定は外国人にも適用されるとする説です。一人一人の人(個人)を大事にしようとする思想から認められた権利が人権なので、外国人も人である以上、人権が認められるとします。
3 外国人にも基本的人権の保障が及ぶとしても、外国人に保障される人権の範囲が問題となります。
(イ)文言説
規定の文言に注目をして「何人も」と規定している場合(18、20、22条など)は外国人にも適用されるが、「国民は」と規定している場合は日本人に限られるとする説です。
(ロ)性質説(判例・通説)
権利の性質上日本国民に限るべき場合を除き、人権保障規定は可能な限り外国人にも適用されるする説です。
☆「基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきである」(マクリーン事件 ・最S53.10.4)。
4 外国人に認められる人権
「性質説」を採った場合、具体的にいかなる人権が性質上外国人に認められるかが問題となります。
(イ)入国の自由・在留の権利・再入国の自由
否定するのが判例・通説です。国際慣習法上、国家の安全のため入国の自由などの権利を外国人に保障している国はないからです。
☆「憲法上、外国人は日本に入国する自由を保障されているものでないことはもとより、在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものではない」「外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、外国人在留制度の枠内で与えられているにすぎない」(マクリーン事件 ・最S53.10.4)。cf.再入国の自由を否定する判例(森川キャサリーン事件・最4.11.16)。
(ロ)政治活動の自由
判例は、外国人にも原則として政治活動の自由を認めますが、表現の自由と国民主権の観点の調和から以下のように考えます。
・政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等⇒保障が及ばない。
・上記以外の政治活動⇒保障が及ぶ。
☆「政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に照らしこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ」(マクリーン事件 ・最S53.10.4)。
(ハ)参政権
特に選挙権については、国会議員選挙と地方議会議員選挙とを区別して考える必要があります。
①国会議員選挙については、否定するのが通説・判例です。
外国人に選挙権を与えることは国民主権原理に反するからです。
②地方議会議員選挙
判例は、「定住外国人」に選挙権は憲法上保障はされていないが、立法政策によって認めることは憲法上禁止されていないとします。国民主権の観点からも不都合はないと考えられるからです。つまり、法律で地方レベルの選挙権を外国人に、与えても与えなくてもどちらでもよい(合憲)こととなります。
☆日本に永住資格をもつ在日韓国人が選挙人名簿への登録を拒否された事件。
「国民主権原理及び地方公共団体が我国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることをも併せ考えると、憲法93条2項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味すると解するのが相当であり、右規定は、我国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない」。
「憲法第八章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性にかんがみ、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に密接な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない」(定住外国人地方参政権事件・最H7.2.28)。
(ニ)公務就任権
判例は、国民主権の観点から外国人は、公権力の行使にかかわる公務員にはなれないとしています。
☆東京都に保健師として採用された特別永住者である外国人が管理職選考試験の受験を拒否された事件。
「国民主権の原理に基づき、原則として日本国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり、我が国以外の国家に帰属し、その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは、本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきである。・・・普通地方公共団体が日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは、合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであり、憲法14条Ⅰ項に違反するものではない」(定住外国人公務就任事件・最H17.1.26)。
(ホ)社会権
① 否定説(判例)は、社会権は各人の所属する国によって保障されるべき権利であるから外国人には認められないとします。もっともこの説も社会権を法律によって外国人に保障することを否定するわけではありません。
② 肯定説は、社会構成員である定住外国人については社会権も保障されるとします。生存権は社会構成員の権利と考えるべきで、日本社会の一員として労働し生活する定住外国人については否定される理由はないと考えます。
☆定住外国人が障害福祉年金の支給対象から除外されたことが生存権を保障する憲法25条に違反しないかが争われた事件。
「社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては・・・その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許されるべきことと解される。したがって、障害福祉年金の支給対象者から在留外国人を除外することは、立法府の裁量の範囲に属する事柄と見るべきである」(塩見訴訟 ・ 最H元.3.2)。
資格試験受験生のやってはならないこと。それは、あきらめること!