第七十六条その2
1 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される
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司法書士試験・行政書士試験受験対策☆憲法条文解説↓
司法権に属する事柄であっても、なお裁判所が審査をしない、又はできない例外があります。
1 憲法の明文上の限界
(イ)国会議員の資格争訟の裁判
憲法は明文で「両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する(55)」としているので、議員の資格に関する争いは裁判所ではなく、各議院が裁判を行います。
(ロ)裁判官の弾劾裁判
裁判官の弾劾(罷免)事件については、両議院の議員で組織する弾劾裁判所(64条1項)の裁判により、通常の裁判所では裁判しません。
2 各議院の自律権に属する事項
各議院の自律権に属する行為については司法権は及びません。各議院の議事手続(定足数や議決の有無など)や議員の懲罰に関する事項などは、各議院が他の機関からの圧迫や干渉を受けないで自主的に決定すべき事柄なので、裁判所の審査も排除されます。
☆昭和29年改正新警察法は、野党議員反対の議場混乱の中で成立したため、その成立手続が違憲無効ではないかが争われた事件。
「(新)警察法は、両院において議決を経たものとされ、適法な手続によって公布されている以上、裁判所は両院の自主性を尊重すべく、同法制定の議事手続に関する所論のような事実を審理してその有効無効を判断すべきでない」(警察法改正無効事件・最S37.3.7)。
3 自由裁量に属する事項
行政機関や立法機関の自由裁量に委ねられた行為には、原則として司法権は及びません。それらは裁量の範囲内で行われている以上、当・不当の問題となるだけで、裁量権を著しく逸脱したり、著しく濫用した場合でない限り司法権は及びません。
☆「何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう厚生大臣の合目的的な裁量に委されており、その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあっても、直ちに違法の問題を生ずることはない」。ただ、裁量権の限界を超え、又は濫用した場合には違法な行為として司法審査の対象となる。(朝日訴訟・最S42.5.24)。
☆「選挙に関する事項の決定は、原則として立法府である国会の裁量的権限に委ねられているが、選挙人の投票価値の平等が一般に合理性を有するものとは到底考えられない程度に達しているときは、もはや国会の合理的裁量の限界を超えているものと推定されるべきものである。(衆議院議員定数不均衡事件・S51.4.14)。
4 統治行為
統治行為とは、国家機関の行為のうち、高度の政治性を有するものについては、法的判断が可能でも司法権が排除されるものをいいます。高度な政治問題は、非民主的な機関である裁判所が決定すべきではないからです。
統治行為論の根拠については、争いがあります。
(イ)自制説
高度な政治問題についての裁判所の審判・介入は裁判所が政治的紛争に巻き込まれることになり、それを避けるために政策的にその権限行使を自制すべきとします。
(ロ)内在的制約説(判例)
統治行為は、裁判所の自制としてではなく、三権分立下における司法権の本質的限界すなわち内在的制約であるとします。高度の政治問題に対する司法判断は、政治に対する裁判所の介入であり権力分立原理に反することを根拠にします。
5 統治行為の範囲と限界
統治行為として、国家の外交的・対外的問題(条約の締結、国家・政府の承認など)や国会と内閣との相互の関係に関する行為(たとえば衆議院の解散が憲法上の要件を満たしているか)などがあげられます。
☆デモ隊が米空軍立川基地に立ち入り、刑事特別法で起訴された。その中で被告人が日米安全保障条約は憲法9条に違反し無効だと主張した事件。
「日米安全保障条約は、わが国の存立の基礎にきわめて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであって、その内容が違憲かどうかの法的判断は、裁判所の審査には原則としてなじまない性質のものであり、一見きわめて明白に違憲無効であると認められない限りは、司法審査権の範囲外のものである。・・・第一次的には条約の締結権を有する内閣と、これに対して承認を有する国会の判断に従い、終局的には、主権を有する国民の政治的批判にゆだねられるべきものである」(砂川事件・最S34.12.16)。
【ポイント】高度の政治性を有する条約には司法審査は一律に及ばないというわけではなく、「一見きわめて明白に違憲無効」であれば、司法審査が及ぶとしている。
☆衆議院の抜き打ち解散によって議員資格を失った苫米地(とまべじ)氏が、この解散は憲法7条によったもので違憲無効であるとして、衆議院議員の資格の確認と任期満了までの歳費を請求した事件。
「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為のごときはたとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であっても、かかる国家行為は裁判所の審査の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解すべきである。・・・現実に行われた衆議院の解散が、その依拠する憲法の条章について適用を誤ったがゆえに法律上無効であるかどうか、これを行うにつき憲法上必要とせられる内閣の助言と承認に瑕疵があったがゆえに無効であるかどうかのごときは裁判所の審査権に服しない」
「この司法権に対する制約は、結局、三権分立の原理に由来し、当該国家行為の高度の政治性、裁判所の司法機関としての性格、裁判に必然的に随伴する手続上の制約等にかんがみ、特定の明文による規定はないけれども、司法権の憲法上の本質に内在する制約と解すべきである」(苫米地事件・最S35.6.8)。
6 団体の内部事項(部分社会の法理)
団体の自治を尊重し、純粋に団体の内部事項の問題は、司法審査の対象にならないと解されています。
判例は、団体が部分社会(国家ないし一般市民社会とは別に、自立的な法規範を有し、それによって、内部的秩序が保たれている団体)を形成する場合、一般市民社会秩序と関係を有しない内部的な問題は司法審査の対象から除外されるべきであるとします。しかし、これを貫くと、団体内部の構成員の人権救済が一切図られなくなってしまうので、判例は「法律上の争訟が、団体(部分社会)の内部問題に止まる限りは司法審査は及ばないが、一般市民秩序と関わる場合には審査権が及ぶ」とします。「一般市民法秩序に関わる」か否かが審査権が及ぶか否かの基準です。
☆地方議会の議員が3日間の出席停止の懲戒決議を受け、それが違法だと争った事件。
「自律的な法規範をもつ社会ないし団体にあっては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも、裁判にまつを適当としないものがある。・・・本件における出席停止のごときはまさにそれに該当する」。もっとも「議員の除名処分の如きは、議員の身分の喪失に関する重大事項で、単なる内部規律の問題に止まらない」から、司法審査が及ぶ。除名は地方議会という部分社会から一般市民法秩序への放逐を意味し、「一般市民法秩序と関わる」問題であるから司法審査が及ぶとしたものである。」(最S35.10.19)
☆政党から除名処分を受けた者が、除名処分の無効を主張して提訴した事件。
「政党の結社としての自主性にかんがみると、政党の内部自律権に属する行為は、法律に別段の定めのない限り尊重すべきであるから、政党が組織内の自律的運営として党員に対してした除名その他の処分の当否については、原則として自律的な解決に委ねるのを相当とし、したがって、政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審査権は及ばない」が、「右処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても右処分の当否は、当該政党の自律的に定めた規範に基づき、適正な手続に則ってされたか否かによって決すべきであり、審理も右の点に限られる」。 (共産党袴田事件・最S63.12.20)
☆単位不認定処分を受けた学生が、その処分の違法を主張して提訴した事件。
「単位の認定のような純然たる大学内部の問題については司法審査は及ばない」しかし、「専攻科終了の認定(卒業認定)についてはそれが連続すると除籍処分となり、これは一般市民法秩序と関わる問題なので司法審査が及ぶ」とする。(富山大学事件・最S52.3.15)
資格試験受験生のやってはならないこと。それは、あきらめること!